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それってレース用じゃないわよね?あたしはあれに乗ると揺れが激しすぎて酔うんだよね。でも、仕方がないわよね。あたしの計算ミスだもんね。お譲ちゃん。船のへりにしっかり掴っててね。じゃないと、海にどぼーんって落ちちゃうから。」
あたしは船のへりに掴った。レース用って言っていた。レース用ってことはそうとう速いわよね。でも、まさかこの小さな木の船でレースに出れるのかしら。あたしのイメージから行くとこんな小さな船でレース用のエンジンをかけたら、船が破壊されてしまいそうだと思った。急いで彼女自身もあたしと反対側のへりにつかまった。
「逸樹。お願い。準備はできたわよ。」
「よし。行くぞ。3・2・1。」
エンジンはぶるるんっと音を出した。そして、船は予想以上のスピードを出した。男は大きな声で楽しんで叫んでいる。彼女は顔を隠している。いや、違うようだった。エンジンをかけてすぐに彼女は船に酔ったようだ。たまにうって声がした。
「あー。玲ちゃん。もうやっちまったのかぁ。
すまんなぁ。で、お譲ちゃんは大丈夫なのかぁ?」
「うん。あたし乗り物酔いはしない方なの。
あのう、あなたもフルを外してこの世界にきたんですか?」
「あぁ、足首に着いていたんだよ。僕は大学に入って、サッカーのサークルに入っていたんだ。4年生なったころだったよ。試合用の靴下を履いた時に、いつものようにそれを触っていたんだよ。大会とか試合の前にそれを必ず触っていたんだよ。そしたら、それがいつもよりゆるかったんだよ。それで最後にいつものように指で玉をはじいたんだよ。そしたら、その玉の所から糸が切れたんだよ。それでここにいつの間にか来ていた。で、今の君のように知らない人に船に乗せられて連れて行かれた。確か、玲ちゃんは小学校に入る前にこっちの世界に来たって言ってたな。玲ちゃん。そうだろ?」
彼女は縦に振った。それから、口に手を抑えながら
「人の過去を話さないで。」
「ごめん。ごめん。玲ちゃんは初めて会う人には少し警戒して、あんまりこっちに来た時の事とか話さないんだ。」
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