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「あのう。それで、これから、あたしはどこに連れて行かれるの?」
「最初は研究所に向かう。」
「研究所?なんで?あたし何かされるの?」
「ちょっと、研究所の人たちに質問されてそれに答えるだけだよ。そこの研究所ではあっちの世界とこっちの世界とのつながりを調べているのだよ。来たばかりの人に聞けば、なにかつながりの謎が分かるかもしれないと思っているんだよ。分からないことはわからないと言った方がいいよ。僕なんてほとんど分からないって答えたよ。」
懐かしそうに言った。遠くの方に光が見えてきた。
「おっ。玲ちゃん。出口がみえてきたみたいだよ。ここを出たら、普通のスピードに切り換えるよ。それまでの辛抱だよ。」
彼女はさっきよりも体調が悪くなったようだ。すこしこっちを見てうなづいた。
「お譲ちゃんは乗り物には強いんだね。これならサイにも乗れるだろう。」
「サイって何?」
「サイはこっちの世界での移動手段の一つだよ。あっちの世界での車のようなものだよ。この船を降りたら次はそれに乗るよ。玲ちゃんはそれに乗るのもだめなんだ。乗り物に弱くてな。」
岩でできた洞窟の出口を抜け出した。空が見えた。真っ青の空だった。雲ひとつない空だった。ずっと遠くに一つの島があった。その島には丘があり、その丘の上に奇妙な建物が建っていた。
その建物は全体が紫色の建物だった。下の方は普通の建物の形なのだが、上の方は湯飲みをのっけたような形をしていた。
段々岸に近づいてきた・
その時、彼女がふとまた顔をあげた。
「逸樹。そろそろブレーキかけたら?」
「あぁ。止めるよ。」
彼女の顔から顔をそらしながら、エンジンの方を向いた。その後ろ姿は少し焦っているように見えた。エンジンの方を向いてから少しいじるような音が聞こえた。しかし、一向に船のスピードが落ちる気配はない。
「もしかしてエンジンを消せないってことはないでしょうね?」
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