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急いで家に帰った。お母さんに知らない人に腕輪をもらったことを報告しようと思った。なんだか怖い気がした。おばさんが怖かったのではない。腕輪が怖かった。なんだかそれをつけた瞬間から身体が縛られている気がした。なにか世界が変わった気がした。
「ただいま。」
靴を脱いで急いでリビングに向かった。お母さんの返事がない。なんで。
「お母さん。お母さん。」
もう泣きそうだった。もしかしかしたら、泣いていたかもしれない。なんだか胸がさみしさ、不安でいっぱいになった。どうすればいいかわからないくらいに痛かった。
ベランダが開いた。
「優衣。帰ってきたの。おかえり。手を洗って、うがいしなさい。」
お母さんがいてほっとした。涙がたくさん出てきた。
「うえーん。うえーん。」
なんで泣いているのかわからなかった。だんだん泣きすぎてどうやったら涙を止めればいいのかわからなくなってきた。
泣きやんでお母さんに話をした。
でも、お母さんは言った。
「どの腕輪?」
あたしは左手をお母さんの前に持っていき、腕輪の端を持って見せた。
「これ。」
でも、お母さんは困ったような顔をした。そしても一度言った。
「どの腕輪?」
お母さんの目の前に腕輪を持って、
「これだよ。これだよ。」
お母さんはますます困った顔でどうすればいいかわからないとういう顔をされた。それでもしつこくあたしはお母さんに見せ続けた。
そうするとお母さんは
「優衣。大丈夫よ。優衣の腕には何もついてない。」
今考えるとお母さんはあたしのことを何か恐ろしいものだと思って見ていたのかもしれない。娘は自分には見えない何かを見ている。もしかしたら頭がおかしくなったと思ったのかもしれない。
でも、あたしはお母さんが心配してくれいるのだと思った。だから、腕輪のことを話し続けた。なんだか身体が縛られているような気がすることも。
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