第一章

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「橘さん」 椅子に下ろそうとしていた腰が、突然名前を呼ばれたことによって宙に浮く。 「橘さん、ちょっと来て下さい」 もう一度呼ばれ声のするほうに目を向けると、課長が来い来いと手招きしていた。 残念ながら椅子に下ろせなかった腰をもう一度浮かせ、課長の元へと向かう。 髪はボサボサ、今はほとんど見なくなった厚みにあるメガネ。 お世辞にもかっこいいとは言い難い身なりだが、これで28歳だというから驚きだ。 その若さで課長になるほど仕事はできるんだけど、その容姿から頼りない印象を受けてしまうのは仕方ないと思う。
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