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青い空、燦々と輝く太陽。
そしてふわふわと漂う白い雲。
この日の天気も、風も、匂いも、まだ昨日のことのように覚えている。
ーーーーバンッ
傍らで鳴り響く銃声。
視線を向けた先には、吹き出す真っ赤な鮮血に貴方の黒い髪。そして、私の方へぐらりと傾く貴方の身体……。
「 ーーーーッ副長!!!!!!」
私は慌てて馬から飛び降り、地面でぐったりとする彼の元へ駆け寄った。
傍らに膝をつき彼の頭を膝に乗せると、彼は真上に見える太陽に眩しそうに目を細め、フッと笑みを浮かべる。
「ハッ、俺もついにここまでか……」
「副長、貴方は何をして……っ!お待ち下さい、今止血をーーー」
そう言って彼の胸元を覗き込んだ私は、ピタリと動きを止める。
それを見た彼は、緩く微笑んだ。
「……どうだ、これじゃあ助からねえだろ」
「……っ!!」
彼の言葉に、思わず唇を噛み締める。
少しばかり医術の心得がある私ではなくとも一目瞭然だった。
ーーー今から急いで本陣に戻ったとしても、この出血では……。
私は傷跡から目を逸らし、きゅっと手を握り締めた。
「何故ですか…!!」
ーーーあの銃声が聴こえるまで、私は彼の前方を走っていた。
不自然に寄せた馬、そして、私を覆うように倒れ込んだ彼。
間違いない。彼を撃った敵は、私を狙っていたのだ。
それなのに。
「何故、私なんかを庇ったりしたのです…!?」
「………」
きっと彼は、私が狙われているのをいち早く見つけ、その銃弾から私を守ってくれたのだろう。
私は彼の……副長の駒だ。狗だ。
彼がやれと言ったらなんだってやれた。彼が死ねと言ったら喜んで命を差し出した。
なのに何故、そんな副長は、私なんかを庇って………っ。
下を向き震える私の手に、副長の手が優しく触れた。
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