序話

3/5
前へ
/17ページ
次へ
「さぁ、なんでだろうな。お前が狙われてるのに気付いたら、身体が勝手に動いてた…」 「な……にを……っ!!貴方の命は、私のものなんかよりもずっとずっと貴重です!それは副長もわかって――」 「……わかってるさ」 私の叫びは、副長の穏やかな声に遮られる。 「これでも、鬼の副長なんて呼ばれて来たんだ……だれが死んで誰が生きればこの先得になるなんたぁ、分かってる」 「……っではどうして!」 私が尚も問いただすと、彼はゴホゴホと咳き込みながら、再び微笑んだ。 その微笑みがあまりに綺麗で……。 私は、彼の命がもうすぐ切れるのだと悟った。 「俺は…単純にお前を死なせたくなかったんだろう…」 「……っ」 「お前には本当に世話になったな……江戸から上洛して、お前が俺らの所に来てから、いつも俺の隣にはお前がいた……」 「そ…んな…当たり前でしょう!?私は、副長に忠誠を誓ったんです!貴方の為なら、命だって惜しまない…!」 副長に拾われた、あの日から… 貴方は私の全てだった。 貴方は私の……っ 「貴方は私の、生きる理由です……!!!」 「………」 涙を流しながらそう訴える私の頬に、副長の手が優しく触れる。 ーーー激しい銃声が響き合う戦場で、不思議と此処だけが切り取られた空間のように感じられた。 .
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加