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「さぁ、なんでだろうな。お前が狙われてるのに気付いたら、身体が勝手に動いてた…」
「な……にを……っ!!貴方の命は、私のものなんかよりもずっとずっと貴重です!それは副長もわかって――」
「……わかってるさ」
私の叫びは、副長の穏やかな声に遮られる。
「これでも、鬼の副長なんて呼ばれて来たんだ……だれが死んで誰が生きればこの先得になるなんたぁ、分かってる」
「……っではどうして!」
私が尚も問いただすと、彼はゴホゴホと咳き込みながら、再び微笑んだ。
その微笑みがあまりに綺麗で……。
私は、彼の命がもうすぐ切れるのだと悟った。
「俺は…単純にお前を死なせたくなかったんだろう…」
「……っ」
「お前には本当に世話になったな……江戸から上洛して、お前が俺らの所に来てから、いつも俺の隣にはお前がいた……」
「そ…んな…当たり前でしょう!?私は、副長に忠誠を誓ったんです!貴方の為なら、命だって惜しまない…!」
副長に拾われた、あの日から…
貴方は私の全てだった。
貴方は私の……っ
「貴方は私の、生きる理由です……!!!」
「………」
涙を流しながらそう訴える私の頬に、副長の手が優しく触れる。
ーーー激しい銃声が響き合う戦場で、不思議と此処だけが切り取られた空間のように感じられた。
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