フォワライト王国のお姫様

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「行くよ」 「はい」 ケビンさんに返事をした俺は、魔方陣の中央まで移動した。 続いて俺の隣にケビンさんが並び、それから数秒後。 この部屋から、2人の姿が消えた。 眩い光から視力が回復し、辺りを見回す。 ……ここは、最初にアンリさんと戦った場所……ナハラの草原だ。 しかし、そこには前に来た時と違う事が2つ。 ……何だこれ? 大地が……枯れてる……? 以前ここに来た時はたしか、辺り一面の草原だった筈だ。 その青々と繁っていた草が、1つ残らず枯れている。 そして、その中に佇んでいる……悪魔が1体。 いや……あいつはただの悪魔じゃない。 まず外見から違う。 体がまるで昆虫の甲殻の様な黒々とした殻に覆われていて、通常の悪魔よりも、1回りも2回りもデカイ。 爛々と深紅に輝く瞳は、真っ直ぐと俺達を睨んでいる。 こいつは違う。 今までの奴らとは、明らかに。 直感でそう感じた。 この悪魔の少し奥に、メル様が宙に浮いていた。 こいつの魔法か? メル様は気を失っている様で、ピクリともしない。 「アンリを倒す実力……悪魔らしく無い戦術……まさか、もうこっちに来ているとはなぁ……」 ケビンさんがあの大柄な悪魔を見た瞬間、納得がいった様な表情で呟いた。 「お前か……」 ゾクゥッ!!!! 隣で静かに燃え上がる闘気に、思わず鳥肌が立った。 ケビンさんの右腕が素早く上がり、悪魔を捉え魔法を放つ。 「魔王ォォォォ!!! テメェがやったのかァァァァ!!?」 魔王……!! あいつが!? Sランククラスの人間でしか倒せない悪魔を従える、魔の王。 ……アンリさんがやられたのも、無理は無いかもしれない。 ケビンさんの咆哮と共に放たれた魔法は、漆黒の雷。 バリバリと放電音を立てながら、魔王へと光速で進んで行く。 「ラァァァァァァァァァ!!!!」 それを立て続けに放ち、魔王の逃げ場を無くした。 ……この圧倒的な魔法に対して、魔王が行った行動は1つだけ。 右腕を軽く振るう。 それだけ。 たったそれだけの事で、Sランク『漆黒の賢者』が放った魔法が、音も無く消し飛んだ。 「そう焦るなよ……ケビン。どうやら、そっちの神の使いの方がお前よりも冷静みたいだな」 ッ!!? な……何でこいつその事を知って……!?
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