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未だ男の周りを漂っている千本桜を元の刀身に戻す。
「あ? てめぇ……何で武器を……」
男はこの行動を不思議に思った様だ。
何でわざわざ元の状態に戻したのか訳がわからないと言った顔をしている。
……しかし、次に行った俺の行動に、男は更に困惑する事になった。
俺は完全に元の状態に戻った千本桜の切っ先を地面に向け、柄から手を離す。
「なっ……!!?」
男から驚きの声が聞こえてくる。
その驚きは、戦場で自ら武器を手離した事に対してもだろうが、千本桜が地面に吸い込まれる様に消えてしまった事に対する驚きも含まれているのだろう。
「卍解」
俺がそう呟くと、俺の背後の地面から千本の巨大な刀身が生えた。
「千本桜景厳」
もう一度、今度は斬魄刀の名前を呟く。
すると、2列できれいに並んでいた千本の巨大な刀身の全てが桜の花びらの様な刃へと姿を変えた。
今俺が行った『卍解』とは斬魄刀戦術の最終奥義と呼ばれ、先程行った『始解』と比べると5倍から10倍のパワーアップを可能にする技だ。
そして『千本桜景厳』の能力は『千本の巨大な刀身が数億枚とも言われる刃と化す』事。
千本桜の時点で攻撃を防げなかった男はもうなすすべが無いだろう。
……だが、これだけではまだ終わらない。
「縛道の六十一 六杖光牢」
俺が唱えた縛道により、男の体に6本の帯状の光が突き刺さる。
これで、この男はもう何の抵抗もする事は出来ない。
……つまりだ。
もう男に残された選択肢は格が違う事を認め、アンリさんに詫びをいれるか……数億枚の刃にその身を切り刻まれるか。
「くっ!! 何っだこれ!!」
男もそれを悟った様で、顔を青くしながら逃げようとするが……全く動けない。
さて、これで謝ってくれるといいんだけど……。
……ん?
何だ? 何か男の様子が……。
「ふざけるな!! 俺が! この俺がこんなガキに負ける訳が!!! まま負けるる訳けけけけけけけけけけけ」
……ゾクッとした。
男はまるで壊れたラジオの様に言葉を発し始め……軽いホラーの様になっている。
周りのギャラリーもドン引きしている様だ。
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