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「おおおおお俺ががががままままま負けけ……けっ」
白目を向き、口から涎を垂れ流し、痙攣していた男の動きが突然止まる。
……正直泣きそうになったが、千本桜景厳を何とか維持する為に耐えた。
突然動きが止まった男を呆然と見つめていると、男の体から何かが徐々に吹き出ている事に気づく。
その時。
──ゾクッ。
背筋に冷たい物が這う感触。
一気に吹き出してきた冷や汗。
先程の狂気に満ちた男を見た時に感じた悪寒とは違う、もっと根源的な恐怖を掻き立てられる様な感覚。
この感覚は……あの悪魔の……!!
男から徐々に吹き出している物……あの悪魔が纏っていた物とそっくりな黒い霧が空へと昇って行く。
……しかし、黒い霧はセルバさんの居た村の時の様に空中で一塊になることは無く、ただこの訓練場から離れて行く。
何だ? ……悪魔の姿にならないのか?
……いや、どちらにしろ逃がす理由は無いよな。
悪魔にならないなら好都合だ。
……黒い霧の内に消し飛ばしてやる。
そう決めるや否や、俺は千本桜景厳にあの黒い霧を攻撃する様に念じた。
空中を漂っていた数億枚の刃が、瞬く間に黒い霧を呑み込み桜色に染め上げる。
その凄まじさには、思わず圧倒させられた。
……ここで俺は少し冷静になり、霧状の物に斬撃が効くのかどうか気になったのだが、その心配は杞憂だったらしく、千本桜景厳に攻撃を止めさるてみると黒い霧は跡形も無く消滅していた。
……のだが、黒い霧が漂っていた辺りに何か黒い球体の様な物が浮いている事に気づく。
そしてその黒い球体からは、また黒い霧の様な物が流れ出している。
……あれは、核みたいな物か?
……よし。
あの球体も破壊する事に決めた俺は、足に力を込め、黒い球体が浮かんでいる所まで跳躍。
黒い球体に到着する間にある技の想像を開始。
すると、千本桜景厳の数億枚の刃全てが俺の元に集い、1本の刀と化した。
そうしてできたその刀を握り締め、ピンポン玉程の大きさの黒い球体に突き立てる。
「終景・白帝剣」
ドンッ!!!
桜色の刃を突き立てられた黒い球体は爆発音と共に弾け飛び、辺りに爆風を撒き散らした。
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