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多少爆風に煽られたが無事問題なく地面に着地し、あの黒い球体の消滅を確認する。
……よし、どうやら完全に消滅している様だ。
消滅を確認したと同時に、千本桜景厳と六杖光牢を消した。
支えを無くした男がドサッと前のめりに地面に倒れる。
……それにしても、何故悪魔が出現しなかったのだろうか。
まあ、そっちの方が良いのだけれど。
「おい……今の黒いの何なんだよ?」
「お、俺に聞くなよ。解るわけないだろ」
俺が疑問について考えていると爆風を浴びて固まっていたギャラリーがざわざわと騒ぎ始めた。
俺とギャラリーとの距離は結構有るのだが、最高クラスの聴力のお陰で余裕で聞こえてくる。
しかし、やはりお城の人も悪魔についてはあまり知らないらしい。
この国で魔物関係の事件が多発しているなら、もしかしたらお城の関係者の人は何か知っているんじゃないかとも思ったんだけど……。
どうやら神様が言っていた通り、お伽噺レベルの認識らしい。
……とすると、俺から伝えた方が良いのか?
……あれ? 待てよ?
確かセルバさんは悪魔の事も城に伝えた筈だよな?
なら……悪魔に関する詳しい知識が無いのだろうか?
だから、あの黒い霧の様な物が悪魔の物だと解らないとすると……。
やっぱり、俺が知ってる分の情報を教えた方が良いんじゃないか?
「……受験者の戦闘不能を確認。それまでの戦闘から、受験者はSランク相応の実力では無いと判断する。よって! 受験者に不──」
「──アンリ、ちょっと待った」
「……何故ですか? 父様」
アンリさんがこのSランク試験の受験者の合否を周りに伝えようとした時、いつの間にかケビンさんがアンリさんの背後に回り、右肩を叩いてそれを止めていた。
アンリさんはそれが気に入らない様で、その鋭い眼光から「早くあの下衆を不合格にさせてくれ」と言う強い思いが俺にすら読み取れる。
「駄目だよ、アンリ。どうやら彼は……」
「……彼は?」
ケビンさんはここまで喋ると、口をアンリさんの耳元に持っていき、俺の聴力ですらギリギリ聞き取れる位の声で呟いた。
「……悪魔に、操られていたようだ」
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