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私は目的の人物を探す為に、城内の探索を開始した。
「ねぇ、アンリエッタ」
「はい、何でしょうか。メル様」
今私の目の前には、赤い髪と瞳が特徴的な、ギルドSランク『紅竜の主』が山盛りの……食べ物と食べ物の間にギリギリ顔が見えるくらいの量の食べ物に囲まれて座っている。
アンリエッタを見つけたのは食堂。
どうやら、遅めの昼食を食べているみたいだ。
……それにしても、この細身の何処にこの量が入るのかしら。
「回復魔法教えてよ」
「回復魔法……ですか」
魔法の事は、その道のプロ……Sランクの人に聞くのが1番良いだろう。
ケビンは居ないし、ユウスケは……お話をいっぱい聞かせて貰ったから、少しくらい休ませてあげないといけないし。
だから、3名のSランクの中で、アンリエッタを選んだのだ。
「何かあったのですか?」
「へ?」
「いや、急に習いたいと仰ったものですから……。何か、理由があられるのかと」
「それは──あ……えっと……。な、内緒で覚えてパパを驚かせたいのよ」
……つい、嘘を言ってしまった。
な、なんか子供っぽいじゃない。
お話の中のお姫様に憧れて、似たような魔法を使いたいから……なんて。
「……成る程、わかりました。それでは、少々お待ちください」
少々……って、この量を食べきるまで待たせる気?
ぜ、全然少々じゃないわよ!
う~……まだ日は高いし……カーナと約束した通り、遅くはならない……わよね?
「お待たせいたしました」
「嘘だ!?」
あれだけ盛ってあったお皿の上には、パンのクズ1つ無く、きれいに全て完食されている。
……ま、まだ5分も経ってないわよ?
「すごい……何でこんなに食べるの早いの?」
「Sランク依頼中は、いつまともに食事を摂れるか解らない様な物も多いので、素早く、大量に食事を摂る術を身につけました」
「……Sランクって大変なのね」
「それなりには」
……ユウスケも出来るのかしら?
「さて、それでは行きましょうか」
「うん。どこで練習するの?」
「外でです。実は、つい先ほどまで依頼をこなしておりまして。その時に、ジェリーが軽い怪我を負ってしまいました。放っておけば治る程度の傷でしたが……練習には丁度良いでしょう」
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