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「ジェリーって……ドラゴンよね?」
「はい」
初めての回復魔法で、ドラゴンの傷何て治せるのかしら……。
「いいですか、メル様」
「な、何よ」
「回復魔法で大事なのは、相手を想う心です。相手に良くなって欲しい、元気になって欲しいと想う心さえあれば、必ず傷は治ります」
……どうやら、不安が顔に出てたみたいね。
相手を想う心……。
「わかったわ! ドラゴンのかすり傷何て、私があっという間に治してあげるんだから!」
「フフッ、その調子です。では、行きますよ」
私は、アンリエッタに連れられて転移室へと向かった。
ドラゴンのジェリーは、結界石の範囲内には入れないので、普段は外で放し飼いにされているらしい。
ドラゴンが放し飼いと聞くと、恐ろしい事かも知れないが、ちゃんとアンリエッタが人を襲わない様に教え込んでいるから大丈夫だ。
それに、この辺りにはドラゴンはジェリーしか居ない為、民衆も『あれは紅竜の主様のドラゴンだ』とわかっているから、パニックになる心配も無い……と思う。
まぁ、そんな訳でこの王都から出るにはかなりの距離を進まなければならないので、外へと続く門の前まで転移で移動しようと言うわけだ。
「こ、『紅竜の主』様にメル様! 何かご用でしょうか!」
「転移魔方陣を1つ使いたい。通してくれないか」
「はっ! どうぞお通りください!」
転移室に到着した私達は、いくつか描かれている大小様々な魔方陣の中から、1番右側の魔方陣の上に立った。
魔方陣が淡く光だし、反射的に目を瞑る。
「メル様、着きましたよ」
アンリエッタに声を掛けられ、目を開くと、そこはもう転移室では無く、巨大な門が目の前にあった。
「相変わらず大きいわね、この門」
「結界石が発見されていなかった時代は、この門が魔物の侵入を防いでいたのです。生半可な門では持たなかったのでしょう」
だから、城の門よりも大きいのね……。
「メル様、今のは歴史でお勉強なされていた筈ですが」
「え゙っ」
「……回復魔法も良いですが、帰ったら復習ですね」
ああ……そんな……あんまりだわ……。
「私だ、通してくれ」
「はっ、ただいま」
うちひしがれる私を尻目に、さっさと外へと進んで行くアンリエッタ。
うぅ……お勉強は嫌……。
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