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……いつまでもこうしている訳にもいかないので、門番にあいさつして、アンリエッタの後に続いて門の外へと出た。
「では、呼びますよ。ジェリーッ!!!!」
ギャオオオオオ────。
アンリエッタの声に返した様に、どこからかドラゴンの雄叫びが響いてきた。
上を見てキョロキョロとジェリーを探すと、遠くの方に紅い点が。
それはみるみる近づいて来て、私とアンリエッタの前に降り立った。
紅い鱗に覆われたゴツゴツした体。
鋭い、むき出しの牙や爪。
ジェリーをこんな近くで見るのは初めてだけど……思っていたより……。
「ギャオオ」
「メル様はお前の体があまりに大きいから驚いていらっしゃるだけだ」
「……へ?」
「今、ジェリーがメル様を見て、『恐がっているみたいだ』と言いました」
嘘……ドラゴンの知性は高いと聞いていたけど、まさかここまで……。
わかるんだ……恐がってる事が。
……ダメよね、こんなんじゃ。
今から私はこの子のケガを治すのに……恐がってちゃ話にならないわ。
……よし。
「……! メル様」
そ~っと伸ばした私の手が、ジェリーの前足に触れた。
ゴツゴツした感触が、手に伝わってくる。
……ひんやりしてるわね。
「……何をなさっているのですか?」
「握手よ」
昔、握手は仲良しの印だってパパから教わった。
ギロリと、ジェリーの瞳が私を捉える。
私も、真正面からそれを受け止め、ジェリーと視線を合わせた。
「…………」
「…………」
数秒の沈黙。
すると、ジェリーの瞳が、少しだけ柔らかくなった様な気がした。
「キャッ……あ」
突然ジェリーの右前足が上下に動き出した。
私が掴んでいる方の足だ。
これって……握手仕返してくれたって事よね?
「ギャオ」
更に、ジェリーが私の前に頭を下げてきた。
これは……。
「なでていいの?」
「ギャオ」
私の質問に答える様に一鳴きしたジェリー。
これも恐る恐る手を伸ばし、頭付近をなでてみる。
すると、ジェリーは気持ちよさそうに喉を鳴らした。
なんだ……意外とかわいいじゃない。
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