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「どうやらジェリーはメル様を気に入ったみたいですね」
「私も気に入ったわ!」
「それは何よりです。それでは、お互い仲良くなった事ですし、回復魔法の練習に移りましょうか」
そう言ったアンリエッタは、続けざまにジェリーの名前を呼んだ。
するとジェリーは、地面に体を丸めて寝転がり、主人に向かって一声鳴いた。
立ってる時もそうだけど、横に寝転がっても充分大きいわね。
……あ、もしかして……。
「アンリエッタ、ケガってあれのこと?」
寝転がっているジェリーを眺めていたら、足に傷を見つけた。
大きくはないけど、血も流れている。
……見るからに痛そうね。
「その通りです。ドラゴンの生命力は強いですから、これくらいの傷は人間で言うかすり傷と同じです」
ドラゴンの強靭な足に傷を負わせるなんて……アンリエッタとジェリーは一体何と戦ってきたのかしら?
「メル様には今からこの傷を治していただきます」
「……わかったわ」
「何度も言いますが、相手を想う心が重要です。それでは、今から詠唱を教えますので、しっかり聞いていてください」
アンリエッタから詠唱を聞き、それを唱え、魔力を流すと、私の両手を淡い白の光が包みこんだ。
何だか、とても優しい光……。
「メル様、その手でジェリーのケガに触れてください」
「こう……? わっ!」
私が傷に触れた瞬間、少しずつ少しずつ傷が塞がっていくのがわかった。
ゆっくりと、けど確実に治っていく傷口を見てうれしくなり、更に張り切る。
「こんな傷、私がすぐに治してあげるから!」
「ギャオオ!」
私の声に反応して、ジェリーがまた鳴いた。
「『ありがとう』だそうですよ」
「本当に!?」
ニマ~ッと頬が緩んだのが自分でもわかった。
「ふぅ、治ったわ!」
魔力の放出を長時間続けるのって、結構疲れるわね。
「完璧に塞がっていますね……。合格です」
「やったぁ!」
初めてで合格をもらえるって、結構すごくないかしら!
「ギャオオオオオ」
ジェリーも、一緒に喜んでくれているみたいだ。
でも、何でアンリエッタはそんなに驚いた顔をしているんだろう。
「……良いのかジェリー?」
「ギャオ」
「……何て言ってるの?」
「『お礼に、背中に乗せようか?』と……」
「いいの!?」
ドラゴンの背中に乗れるなんて……、まるで物語の主人公になったみたいじゃない!
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