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「よい……しょっと」
「気をつけてお乗りください。下手をすると落ちてしまいますよ」
「わかってるわ」
アンリエッタはそう言っているけど、アンリエッタが後ろから私を掴んでいてくれる事になっているから、落ちる事はほとんどないわよね。
ジェリーの背中はゴツゴツしていて、とても座り心地が良いとは言えないけど、紅竜の莫大な生命力が鱗を通して伝わってきた。
ドラゴンの背に乗る何て……王族の私でもそうそうできる事じゃない。
一体どんな感じなのかしら……。
期待に胸を膨らませ、今か今かとその時を待つ。
「行きますよ!」
来た!
バサァッ!! と1回、ジェリーが両翼を力強く羽ばたいた。
その瞬間、私の体が浮遊感に襲われる。
「わっ」
慌てて、ジェリーの体をしっかりと掴んだ。
2回、3回と羽ばたく度に、段々高度が上がって行く。
やがて、さっきはあんなに大きかった門が、すっかり小さくなってしまった頃、ジェリーが風を切って進み出した。
「どうですか? メル様」
「最高よ! こんなに気持ちいいの初めて! すごいわ! 速い速い!」
風を切る音がビュービューと耳に響き、視界に映る景色が目車しく移り変わる。
こんな体験は生まれて初めてだわ!
私は、そのまま思う存分ジェリーの背中を楽しんだ。
すっごく楽しかったんだけど……喉が渇いちゃった。
ずっと「ワ~~~!」とか「キャ───!」とか騒いでいたら、こうなるわよね。
どうしよう……空中に水なんてあるわけないし……。
……!? 眩しっ!?
解決策を考える私の目に、何かの光が飛び込んで来た。
……? 今あそこ何か光って……。
あれ森の中の……湖? ああ、湖に太陽の光が当たって……。
いや、それより……水だわ!
「ねぇアンリエッタ! あそこの湖の水は飲めるかしら?」
「……ああ、あの湖は大丈夫ですよ。任務中に飲んだ事があります」
「じゃあ、ちょっと飲みにいかない? 喉が渇いちゃった」
「そうですね……、あの森は大したモンスターもいませんし……。行きましょうか」
「ギャオオ」
ジェリーがまるで『了解』と言った様に鳴き、進路を湖へと向けた。
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