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湖の上空に着いたジェリーは、そのまま降下して行った。
ジェリーの羽ばたきから起こる風が水面に波紋を立てている。
湖の周りにはあまり木々が無かったので、ジェリーはそこに着地した。
ズゥンと音が鳴って、ジェリーが地面に着いた事を確認した私は、屈んでくれているジェリーの背からピョンと飛び降り、直ぐ様湖の水を飲もうと駆け寄ったのだが……。
「メル様、お待ちください」
「……何よアンリエッタ」
「湖の中にもモンスターは居ますので、一応確認しておきます」
そう言ったアンリエッタは、湖を覗き込みモンスターが居ないかどうかチェックを始めた。
……まだかしら。
目の前に水があるのに我慢しなきゃならないなんて……。
「……居ない様ですね。良いですよ、メル様」
この言葉が聞こえた瞬間、素早く私は湖の縁に屈み、手で水を掬い上げた。
それを口に運び、飲む。
ごくごくと喉が鳴る音が聞こえる。
「おいしい!」
「では、私も……」
「ギャオオオ」
私が飲んだ後に続いて、アンリエッタとジェリーも飲み始め、私達は満足するまで水をたらふく飲んだ。
……ザワ。
風が吹いた。
森の木々がざわめき、水面には波が立つ。
「……何者だ」
アンリエッタの顔つきが変わった。
スッと立ち上がり、薄暗い森の中を睨み付ける。
「俺の気配に気づくか。なるほど、強いな。……同胞達では敵わない訳だ」
誰かいる……!
「しかし……やはり俺はラッキーだな。そこの子供はお姫様何だろ? 用があるのはお前だけだったんだが……、でかいおまけが付いてきた」
「……メル様、私の側から離れないでください」
森の中から聞こえてくる声は、何か……聞くだけで不安になってしまうような……嫌な感じのする声だった。
私は、その声から逃げる様にアンリエッタの後ろに隠れる。
「さて、と……。それじゃあ、あまり抵抗はするなよ?」
ジェリーが私を守るように近づいて来て、森のある一点を睨み付けた。
あそこにいるの……?
「無駄だから」
その言葉と共に、ジェリーの視線の先から何かが飛び出してきた。
鮮血が、宙を舞った。
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