フォワライト王国のお姫様

23/34

9529人が本棚に入れています
本棚に追加
/668ページ
湖の上空に着いたジェリーは、そのまま降下して行った。 ジェリーの羽ばたきから起こる風が水面に波紋を立てている。 湖の周りにはあまり木々が無かったので、ジェリーはそこに着地した。 ズゥンと音が鳴って、ジェリーが地面に着いた事を確認した私は、屈んでくれているジェリーの背からピョンと飛び降り、直ぐ様湖の水を飲もうと駆け寄ったのだが……。 「メル様、お待ちください」 「……何よアンリエッタ」 「湖の中にもモンスターは居ますので、一応確認しておきます」 そう言ったアンリエッタは、湖を覗き込みモンスターが居ないかどうかチェックを始めた。 ……まだかしら。 目の前に水があるのに我慢しなきゃならないなんて……。 「……居ない様ですね。良いですよ、メル様」 この言葉が聞こえた瞬間、素早く私は湖の縁に屈み、手で水を掬い上げた。 それを口に運び、飲む。 ごくごくと喉が鳴る音が聞こえる。 「おいしい!」 「では、私も……」 「ギャオオオ」 私が飲んだ後に続いて、アンリエッタとジェリーも飲み始め、私達は満足するまで水をたらふく飲んだ。 ……ザワ。 風が吹いた。 森の木々がざわめき、水面には波が立つ。                      「……何者だ」 アンリエッタの顔つきが変わった。 スッと立ち上がり、薄暗い森の中を睨み付ける。 「俺の気配に気づくか。なるほど、強いな。……同胞達では敵わない訳だ」 誰かいる……! 「しかし……やはり俺はラッキーだな。そこの子供はお姫様何だろ? 用があるのはお前だけだったんだが……、でかいおまけが付いてきた」 「……メル様、私の側から離れないでください」 森の中から聞こえてくる声は、何か……聞くだけで不安になってしまうような……嫌な感じのする声だった。 私は、その声から逃げる様にアンリエッタの後ろに隠れる。 「さて、と……。それじゃあ、あまり抵抗はするなよ?」 ジェリーが私を守るように近づいて来て、森のある一点を睨み付けた。 あそこにいるの……? 「無駄だから」 その言葉と共に、ジェリーの視線の先から何かが飛び出してきた。 鮮血が、宙を舞った。
/668ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9529人が本棚に入れています
本棚に追加