フォワライト王国のお姫様

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長い廊下や階段を、全速力で駆け抜ける。 やがて見えて来た王の間の扉を、ケビンさんと力を合わせて蹴破り、その先にある光景に見て───頭が真っ白になった。 「隊長ォッ!! 血が止まりませんッ!!」 「諦めるなァッ!!! 回復魔法に集中しろ!!」 響き渡る大声に、何かを囲んでいる男達の腕は真っ赤な血にまみれている。 男達の間からその何かが見えた。 見慣れた赤い髪が、血に染まって一層その色を濃くしている。 間違いない……アンリさんだ。 アンリさんの体には大小様々な傷が刻まれており、中でも酷いものは、肩から腰にかけて袈裟斬りに斬られた深い傷と───。 ───右腕と左足が……無い。 「ゴクウ君……」 「……はい」 「アンリを……アンリを治してやってくれないか! 私の……私の魔法では……治す事が出来ないっ!!」 ……余程悔しいのか、ケビンさんの噛み締めた口と、握り締めた手からはポトポトと血が流れ落ちている。 「任せてください!!」 直ぐ様想像を開始し、出現させたのは花のヘアピン。 「舜桜!! あやめ!! 双天帰盾!!」 俺が使うのは、あの村でセルバさんを治した『双天帰盾』。 この技なら、腕や足を切断されていても元通りに出来る筈だ……! 「私は拒絶する!!!」 俺の言葉に反応した、小人がアンリさんの元へと飛び技を発動した。 アンリさんの様々な傷が、徐々にだが治っていっている。 腕と足は……よし、大丈夫だ!! 「アンリ!! アンリ!! 大丈夫か!!? 目を覚ませェ!!!」 傷が治って行くアンリさんに、ケビンさんが近寄り、頭を抱き抱えた。 すると、 「と……父……様、ゴク……ウ……」 「ッ! アンリ!」 アンリさんが目を覚ました。 だが……。 「アンリさん! まだ喋らないでください! 傷が……!!」 「……父……様、申……し訳……あり……ませんッ……。め……メル様が……拐……われ……て……」 「何……!?」 「返し……て……欲しくば……ナ……ナハラの……草……原に……来い……と……。私が……ついてい……なが……ら……申し……訳……」 「もういい!! わかった!! 喋るんじゃねぇ!!」
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