フォワライト王国のお姫様

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「ほぉー。状況が絶望的と見るや、被害が最小限になる様に収めるか……。そんなに大事か? 自分の身より? あの国が? 国王が? ……あの娘が?」 ケビンさんが噛み締めた口から、ギリギリという歯ぎしりが聞こえた。 ……きっと、あのボロボロのアンリさんの姿を思い出しているのだろう。 「……ああ、大事だ。自分の命よりもな。だから───」 「───じゃあ駄目だな」 「なッ──!?」 「ク……ククククッ……クハハハハハハハハハハッ!!!! そうだよ!! お前のその顔が見たくてわざわざ人間界まで出てきたんだ!!!」 魔王の下卑た高笑いが、俺の鼓膜を揺らした。 ……こいつ……。 「ククッ!! 安心しろ! 人間が苦しんで死んで行く様は、このモニターにしっかりと映してやるからな!!」 「魔王ッ!!! 貴様ァァァァァァァ!!!」 ケビンさんの両肩と足に、まるでブースターの様な漆黒の炎が出現した。 同時に使用した風の魔法で炎の勢いを強め、一瞬にして魔王との間合いを詰める。 魔王が射程圏内に入った事で、肘の部分にも炎が出現した。 この距離であのスピードなら……やれる! 「怒りで我を忘れたか?」 またしても。 魔王がケビンさんの拳に手を触れた瞬間、ケビンさんが使っていた魔法が跡形も無く消えた。 「そら!」 無防備になったケビンさんに、魔王が蹴りを放つ。 バギィィィィッ!!!! 「グァッ!!」 咄嗟に腕をクロスさせ、なんとか蹴りをガードしたが、ケビンさんは元に居た地点まで吹っ飛ばされてしまった。 「クックッ、早く俺を倒してあの同胞達を倒さなければお前の大事な者達が死ぬぞ!!?」 ……つい先程、ケビンさんの殺気を浴び多少収まっていた怒りが、また溢れ出して行く。 こいつは……。 「……! 同胞達からの連絡だ。そろそろ目的地に…………何? 今何と言った?」 どこか慌てた様に、魔王が後ろを振り向きモニターを確認した。 各モニターの中に映っていたのは、悪魔の大軍の行く手を塞いでいる3人の人間。 「何故……何故そこにいる!!?」 陸、海、空。全ての大軍に1人ずつ着いているその人間は……黒髪黒目の少年だった。 「何故貴様がそこにいると聞いている!! 神の使い!!!」
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