フォワライト王国のお姫様

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……俺は今まで、義務感で悪魔と戦ってきた。 神様に頼まれたから……。 俺がやらないといけないから……。 でも、こいつは……こいつだけはッ!!! 「ッ!! そうか! あの奇妙な姿の時に使った技だな? ……しかしどうする? 1人ずつであの大軍を止めるつか?」 「……1人じゃないさ」 「……何?」 このやり取りが行われた直後、モニターに映されている3人の俺があるポーズをとった。 チョキの指を引っ付けた形の手を両手で作り、それを胸の前で十字の形にしている。 ……この3人の俺は、俺の分身でもあり……実体でもある。 「「「影分身の術!!」」」 ボボボボボボン!!! 突如として煙が無数に出現し、それと共に多数の俺が現れた。 「なッ……!!」 「……こんなに怒ったのは生まれて初めてだ」 驚愕を隠そうともしない魔王に、淡々と、だが怒りに満ちた声色で語りかける。 そして、吼えた。 「魔王……お前は必ずこの手で倒す!!!!」 宙に描く字は『刹』。 爆発する俺の想像力が、足元から1体の巨大な眼の無い、一見蛇にも見える竜を召喚した。 「キィィシャァアァァアァアァア!!!!!」 現れた『八竜』の内の1体、『刹那』が、俺の怒りに呼応する様に強烈な雄叫びを上げる。 そんな中、俺はケビンさんにそっと語りかけた。 「ゴ、ゴクウ……こいつは一体……」 「後で説明します。……それより、ケビンさん。こいつの眼を絶対に見ないでください」 「……眼? こいつに眼なんて──ッ!!!」 丁度ケビンさんに注意し終えた頃、刹那の眼が開き始めた。 1つだけ存在する刹那の巨大なそれは、ビキビキと嫌な音を立てながら開いて行く。 それを見たケビンさんは一瞬にして危険を悟ったらしく、目を固く瞑った。 ……『八竜』には、それぞれ固有の炎が存在する。 この刹那の炎は、『瞬炎』。 普段閉ざされている刹那の眼を見た者を──── 「なッ!!? グオオォオォオオ!!!!」 ───燃やし尽くす炎だ。
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