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視点変更
ケビン・ハーリン→村枝雄介
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「なぁに、簡単な話だ。俺は魔力を打ち消せる」
「くそったれが……」
魔力を……打ち消す?
俺の脳内で、魔王がケビンさんの魔法を腕を振るって消し去った光景が再生される。
……そうか。
どうりでケビンさんが大人しく戦いを見守っている筈だ。
本当なら『ゴクウは引っ込んでろ』ぐらい言いそうだもんな……。
魔力を打ち消す……魔法が効かない。
俺の力は神の“創造の力”の一部だから……どういう仕組みかはよくわからんが勝手が違う訳か。
俺の脳内で、今度は『砕羽』刃が魔王の体を薄皮一枚だが切り裂いた瞬間が再生された。
当たりさえすれば……倒せる。
俺が奴を倒せる可能性を感じ、静かに闘志を燃やしている時、魔王が言葉を紡ぎ始めた。
「……だが、俺と神の使いの戦いをただ見ているだけじゃつまらないだろ? ……お前は、こいつの相手でもしているといい」
「こいつ……?」
───その時。
俺のこの世界で最高クラスの聴力が、微かにある生物の咆哮を捉えた。
……待て。
この……声は……。
「ギャオオオオオオオオオオ!!!!」
今度はハッキリと。
力強い羽ばたきと、聞く者を震え上がらせる咆哮を響かせながら……。
深紅の鱗に包まれたドラゴンが現れた。
「なっ……」
「ジェリー……!」
それは、紛れもなく『紅竜の主』の唯一のパートナー。
なんで……なんでジェリーが!?
「何を驚く事がある?」
さも楽しそうな魔王の声が、疑問で支配された頭に響く。
「悪魔は魔物を操る力を我が神から授かっている。なら俺も使えるのが道理。そして紅竜は魔物だ……とても強力な、な」
「魔王ッ!!!」
「そう怒るな。お前の相手は俺じゃない、こいつだ」
魔王がそう言った時、ジェリーが俺達に向かって火球を放とうとしている事に気がついた。
「ケビンさん!! 避けてください!!」
俺が言葉を喋り終えた瞬間、ジェリーが火球を放った。
2発の火球が俺とケビンさんが避けた後の地面に直撃し、爆炎と爆音を撒き散らす。
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