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砕羽の刃で斬れる事は確認済みだ。
この大量の火の玉を受けたら、奴でもただではすまない筈。
「チィッ!!!」
盛大な舌打ちと共に、魔王は魔法を使い、どす黒い大量の水を自身の全面に出現させた。
その水に着弾した火の玉が、ジュッと音を立てて消え去る。
俺の攻撃は失敗したが、今、奴の視界が塞がれている。
今だ!!
パシャッと、役目を終えた水が地面へと落ちる。
「……! 特攻か! 勇ましいなァ!!」
遮る物の無くなった魔王の視界に映ったのは、腕から『砕羽』の刃を生やし、全力疾走で魔王へと真っ直ぐ向かっている俺の姿。
「オオオオオオオオオ!!!!」
「だが……」
ドスッ!!!
「俺に策も無く突っ込むのは……失敗だったな」
「ゴフ……」
ただ真っ直ぐ進んでいた俺に突き出された魔王の拳は……俺の胸部を貫いた。
掛かったッ!!!!
ユラ……と、一瞬にして胸部を貫かれた俺が、炎の塊へと姿を変える。
「これは……!?」
魔王の驚愕の声を聞きながら、囮に気を引かせている内に奴の背後へと回っていた俺は、ニヤリと笑った。
作戦通り……!
竜之炎陸式『塁』。
炎の能力は幻炎。
術者のイメージを、そのまま形どる炎。
今のは、俺の姿を模した『塁』の炎を囮に使い、奴の背後を取る事に成功したのだ。
そして今こそ……最大のチャンス!!
素早く宙に『虚』と描いた。
呼び出された一つ目の竜『虚空』が、敵を認識し、その口に炎を溜め始める。
「しまっ……!!」
「虚空ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
凝縮、圧縮された炎が、一筋の光となって突き進む。
ドォギャァァァァァァァァ!!!!!
炎のレーザーが、魔王の背中へ直撃した。
「ガッ……グァァァァアァアァ!!!」
直撃を受けた魔王が吹き飛ばされ、地面へ直撃し、大量の砂埃が辺りに舞った。
『虚空』のレーザーは、正に必殺の一撃。
当たればただではすまない筈なのだが……。
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