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ピクリと、地面に倒れていた魔王が起き上がる。
……ッ!!
ハハ……笑えねぇな……。
「無傷……かよ……」
奴が体に着いていた埃を払った。
そこに居るのは、『虚空』を受ける前と寸分違わぬ奴の姿。
「この甲殻はな……、魔力を打ち消す他に、自由に硬度を変えられる能力を持つ」
淡々と語る魔王。
なるほど……。実力を伺ってた時は、硬度を下げて戦ってたのか……。
「今は、硬度を最高まで引き上げた。……大した技だ。一瞬遅れていたら、危なかった」
魔王が口を開く事に、俺を押し潰さんばかりの気迫が飛んでくる。
とうとう……本気を出す様だ。
「遊ぶつもりだったんだが……止めだ、死ね」
フッ!
魔王が視界から消えた。
くそッ、速ぇ!
ッ! 右か!
視界から消えた魔王が、右から拳を振り上げて向かって来る姿を何とか捉えた。
急いで空中に『砕』を描き、炎の刃で向かえ打つ。
斬れないだろうが……無いよりましだ。
魔王の振り上げられている右腕に向かって、『砕羽』の刃を振るった。
キィン!! と炎の刃と漆黒の甲殻がぶつかり合う音が響いた。
その直後。
ドゴン!!!
「カッ……ハ……!?」
背後から息の詰まるほど強い衝撃。
い、今確かに右に……!
バキィィッ!!!
「グァ!!」
今度は下から!?
背後からの一撃により吹き飛ぶ俺を、魔王はどうやら蹴り上げた様で、空高く俺の体が宙を舞った。
重い。
魔王の一撃一撃が。
速い。
魔王の動き全てが。
こいつ……強ぇ……。
「空中なら避けれ無いだろう」
魔王の言葉に、思わず奴の方へと視線を向ける。
魔王の目の前には、漆黒の火の玉。
あの炎……『虚空』!!?
「喰らえェェェェェェ!!!!」
超速で放たれた、漆黒の『虚空』。
「円ァァァァァァ!!!」
反射的に描いたのは、竜之炎伍式『円』。
この炎は、小さな火の玉の点が、線で結ばれ、強力な盾となる面を作る。
盾が出現した直後、漆黒の『虚空』と『円』がぶつかり、何とか虚空を防ぎきった。
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