17人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
初めて恋をした。
出逢いは些細な巡り合わせで、きっかけは呆れ返るほどに単純だった。
性格は真逆なのに、なんとなく気が合った。
いつの間にか互いの隣には互いがいて、それが当たり前になっていた。
今日もいい天気だね、なんて他愛もない話をした。
たまには一緒にどこかへ行こうよ、なんてぶらりと出掛けた。
これで居なくなったりしないでしょ、なんて温かく手を繋いだ。
そばに居ると安心するんだ、なんて身を寄り添い合った。
ずっと一緒に居ようね、なんて唇を重ねた。
どっちから告白した覚えはなく、自然と俺たちは恋人同士になっていた。
神様っているんだね。
だって、私たちを出逢わせてくれたんだもん。
あいつは本当に幸せそうに笑った。
笑い、泣き、時にはケンカし数日間口を聞かなかったこともあるけど、あいつを思う感情に嘘はなくて、仏頂面と言われ続けてきた表情がいつしか緩んでいた。
誰かを好きになって、周囲の景色が明らむのがわかった。
誰かを好きになることの、誰かを好きでいられることの喜びを知った。
たった十数年ぽっちしか生きていないガキなりに、これが幸せなんだと精一杯嬉々とした……
そして……幸せとは儚いものだと、絶望に涙した……
最初のコメントを投稿しよう!