第一章:十三番目の魔法剣士

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国立、星鈴学園。 小、中、高、大学といった学舎が並列し、大小様々な施設が建ち並び、更には森や平原、川や湖などが存在する、都市……いや、もはや国として機能する広大な学園。 その歴史は古く、創始を紐解くと明治の初期にまで遡る。 表向きには優秀な進学校と銘打っているもの、その実態は"魔法"と呼ばれる力の存在の擁護、及び育成に力を入れている……言わば、魔法使いの魔法使いによる魔法使いの為の学園。 世界には人が思う以上に魔法が満ち溢れているとはいえ、魔法使いはそれを世間に公開していない。 隠匿せざるべきその理由として大きくを占めているのは、時代が魔法を拒絶しているが故のこと。 世界の始まりより起源を持つ魔法だが、時代は進歩と進化を重ねるに連れ、魔法よりも科学の発展を選んだ。 火を起こすのに呪文を唱える必要も無ければ、空を飛ぶのに箒に股がる必要も無い。 そういった思想を持った一部の人間は魔法を闇へと葬り、魔法使いは歴史の彼方に消えざるをえなかった。 魔法使いはいつしか歴史の表舞台から姿を消したとはいうもの、人の記憶の片隅には残り、童話や神話の中でのみ語り継がれる存在へとなった。 しかし、幾百幾千と永い時を経た現代においては世界各国において、首脳クラスの要人により魔法使いを容認する機関が秘密裏に設けられ、魔法使いは少しずつ表舞台へ戻ることを許され始めている。 国が魔法使いを認めて尚、魔法使いは世間には介入しない。 皆が皆、魔法使いを求めるわけでも、認めるわけでもないからだ。 だから、魔法使いは普通として世界に関与する。 魔法という力を隠して。 そして、時は2011年4月…… 朝焼けが街並みを山吹色に染めて、二時間近くが経過した頃。 俺、氷奈神 零夜は、星鈴学園の敷地内である高等部第一区域の中央道路を疾走していた。 こんな人の居ない朝の早くから全力で走っているのには、ちゃんとした理由がある。 健康的に汗を流すジョギング……なんて生ぬるいものであるはずがなく、誰より早く登校しようだとかいう殊勝な考えがあるはずもない。 何故かと問われるなら……そうだな…… 後ろから包丁を持った女が、鬼のような形相で凄まじいスピードで追い掛けてきて、逃げない奴などおそらくいないだろう。 たとえそいつが知り合いだとしてもだ。
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