もうひとつのエピローグ

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演奏が終わり部屋に静寂が訪れる。 しばらく動く事が出来なかった。 誰かのためにピアノを弾いたのは初めてだったかもしれない。 いつも自分のためにしか弾いてこなかった。 一瞬見えた酒井さんの悲しみを、少しでも癒せれば… 不思議な感覚だった。 パンパンパン… 酒井さんの拍手にハッとする。 笑顔で拍手をしながら立ち上がると、酒井さんはゆっくりとこちらに向かって歩き出した。 私はぼんやりと酒井さんを見つめた。 そして、酒井さんの目が赤くなっている事に気がつく。 「…ありがとう。素晴らしかった。」 私の中に熱い物がこみ上げた。
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