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酒井さんは泣いてしまった事を、照れながらも隠そうとはしなかった。
「正直驚いた。
明日香ちゃんのピアノ凄いよ。
俺、泣いたの何年ぶりだろ…」
「初めてです。
ピアノを弾いてこんな気持ちになったの。」
酒井さんの入れてくれたコーヒーを飲みながら、私は余韻に浸っていた。
私のピアノに感動してくれる人がいる。
たったそれだけの事なのに胸が熱くなる。
「魔法にかかっちゃった?」
「…え?」
「うん。魔法。」
酒井さんがコーヒーを一口飲む。
「演奏をよろこんで貰える喜びを知ると、また弾きたいって魔法にかかってしまうんだって。」
「…」
「ピアノの持ち主が言ってたんだ。
どんなに辛くても、その魔法にかかった者は弾く事をやめられないって。」
そう言って、酒井さんは私に魔法をかけた。
ー ENDー
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