亡くならない記憶

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 今度で何度目なんだろう。  昨日から敷いていた布団へ夢快は寝転がり、一人言を呟く。  夢快には人に話しても一切共感されない極めておかしい現象を体感している。  それは死んでも前世の記憶を亡くさず生まれ変わることだ。気付いたら本名から体格、環境がまるで違う人間になっている。因みに女性に生まれ変わったことはない。  何故、前世の記憶があるのか。  考えるだけで一般的とは違うと感じ、自身が不思議で堪らない。まるでネジを新しいのに入れ替えた気分だ。  実際に何度生まれ変わりを経てるか分からないが、死んだ時の記憶を覚えているのは約14回。死に方は多種多様で、事故死、安楽死、銃殺、自殺……まだあるが、あまり思い出したくない。  そして、今の現世で死ぬと15回目になる。  意味が分からない。これは神のいたずらか? 何度、死を体験しても終わらない。  唇を噛み締め、怒りに震える。  永遠の命が如何に馬鹿らしいことかを考える。永遠なんてものは、一生の苦しみを味わう事だ。何故、みんな望む。死が一番、幸せだ。  今は忘れてしまった前世のない一番最初の人間の頃であれば、死ぬことが幸せとは思わないだろう。しかし、今は違う。生きてきて分かったのは、死ぬことが幸せだと言うことだ。人によって幸せは変わるが、夢快の望みは楽になることだけだった。  叶わぬ夢だと分かっているが……  夢快は寝転がるのをやめ、胡座を掻くと電子機器の電源をつける。  これだけ生きてきた夢快にとって、ゲームとアニメ、漫画だけが唯一の救いだ。  年代を重ねる毎に技術が進歩していくのを見ると心が躍り、それだけを楽しみにしてきた。  こうした毎日を繰り返し、大学生で一人暮らしである夢快はゲームに夢中でのめり込む。  現実逃避をするように。 「やっぱり、ここはいいな。落ち着く」  2031年、八月中旬の夏季。天気予報では一番の猛暑日となると言われた真夏日。  そんな日にむさ苦しい男達が行列を為して並んでいる。この集まりは夏コミと呼ばれる年に数回しか行われない貴重なイベントで、ゲーム、アニメなどの紹介や販売が行われている。そのため、服装にこだわらない黒服ばかりの男達がよく目立つ。  今となってはゲームやアニメは世間に浸透しつつ、もはやブームに近い。  そのためか一般人も黒服に紛れる形でちらほらと見かける。
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