亡くならない記憶

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 そして集団の一部に夢快もいた。意気揚々と入場の時を待ち焦がれている。  しかし、直射日光と密集した人混みの中を立ち続けるのは相当つらい。体中に大量の汗が流れ、シャツがへばりつき、かなり気持ち悪かった。  そんな自然の猛威から気を紛らわす為、夢快は考える。  これだけの人数がいるなら、夢快と同じ境遇の奴も一人はいるのではないだろうか。俺一人ではあまりに不公平だ。  縋る気持ちに似た感情で、辺りを見回す。  薄ら笑いを浮かべ列に並ぶ者、額の汗を何度拭うも汗が止まぬ者、今にも倒れそうに体が揺れている者、人混みで蒸し暑い中を黒いシャツ、黒いドレスで着飾る者。  一般的とは違う個性豊かな面々が列に並ぶ。  この中には夢快と同じ境遇の者はいないと見て判断する。  少しでも期待した自分が恥ずかしくなった。  ため息混じりに息を吐き、列が動き出すのを待つ。  結局、あれから二時間かけ会場に入場した。  それから――夢快は購入した私物を袋一杯に入れ、手提げ袋を片手にある人物へ近付く。  全体的にうねった髪、それでいて艶かかった長い髪が特徴である不思議な彼女。曲がった髪でありながら鼻筋辺りまで伸びており、表情が読み取りずらい。  夢快の正直な感想は不思議というより不気味だった。 「ずいぶんと遅かったですね」  抑揚のない声で彼女が言う。 「欲しいものが多くてね」  夢快は彼女を知らない。しかし、今こうして二人で会っている。  それには訳があった。  少し前に夢快はイベント会場のブースを一通り巡り、一息吐くため一端会場の外へと出ようとした。すると会場の出入口付近でぶつぶつ呟く怪しげな人物がいた。その姿があまりに怪しいからか、周りに人の姿がない。  しかし、夢快はそれをじっと見ていた。どこかで見たことがある気がしてならず、彼女を観察する。  結果としてそれが災いになる。  その視線に気がついた彼女は目が合うと凄い勢いで近付いてきた。そして、言ってきた言葉がお願いします。その袋の中身を見せてくださいだった。
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