亡くならない記憶

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 人と人との関係が適度にしか保てない。嫌われもせず、好きにもなられずと言ったところである。  全く困ったものだ。と言っても、なおす気がないのはそれでもいいという気持ちがあるからか。  そんなことを考え、夢快は午後の大学の授業をやり過ごす。  物思いにふけるのも夢快の癖であり、授業時間の丁度良い時間潰しになっている。  それに夢快は授業を聞かずとも、今までの積み重なった記憶があり、成績は悠々と平均点を越えている。 「また物思いにふけってる。自分を見つめなおすのは良いことだけど、やり過ぎなのはただのナルシストだよ」 「自分の風貌に酔しれてるのがナルシストだろ。俺のは思考であって、世間一般で言う中二病と呼ばれるやつじゃないのか?」  話し掛けてきたのは同学年の友達である須藤美篶だった。  授業に退屈してきたところ、暇潰しがてら夢快に声をかけてきたようだ。  須藤は親が若く、最近の名前に度々見られるDQNネームと言う変に複雑な名前をつける風潮の犠牲者だった。一体、誰がみすずと読める。夢快も最初は驚いたものだ。  時代の流れは、とにもかくにも恐ろしい。夢快はそう感じていた。 「また何か考えてるでしょ。ほんと分かりやすいよね。ただそれ、知らない人が見たら、無口に見えたり、ボケッとしてるだけだからやめた方がいいよ」 「ご忠告、どうもありがとう。けど、この癖は治せそうにもない」  苦笑を漏らし、忠告を受け流す。なん百年間の癖がそう簡単になおせるわけがなく、きっとこのままであると夢快は考えている。  その後、講義が終わるまでの間、須藤と他愛ない話をした。  講義が終わり、すぐさま夢快は今日発売される小説を買いに行こうとするが、須藤に呼び止められる。 「ねぇ、今日って何か用事があったりする?」  須藤は少し緊張しているように見えた気がした。 「ある。今日は待ちに待った愛読書の新刊が発売するんだ。だからーー」 「あぁいいよ、いいよ。その先は言わなくて結構! 大体わかったからね」  可哀想にとも思わせる表情で夢快を見た須藤は話を付け足す。 「女の子の心境を少しでも理解していない男は嫌われるぞ。後、そんなことにばっか夢中だとこの先、好い人が現れないかもよ」  夢快はご忠告どうもとだけ告げ、教室を出た。
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