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「でも、でもですよ! 知らないのに知っていたのは事実で、これは大きな進展なんですよ」
「これが分かるとどう進展するんだ?」
…………返事が返ってこない。小さな声で何がわかるんだろうと聞こえてきたのは気のせいだと思いたい。
夢快は肩を落とし、状況を整理する。
知らないのに知っていたサークルと彼女の関連性はまず大したことない関係だろう。見たことないのに絵が書けるのは確かに前世の記憶と呼べなくもないが、これだけでは何も進展はしない。
ここで夢快はふと思ったことを口にする。
「そう言えば、まだ聞いてなか……」
「私の名前ですね! 雨音凛と言います」
質問の途中に割り込まれ、質問とは全く違う内容が返ってきた。雨音はしてやったりと妙にご機嫌である。
「私、先読みするのが得意なんです。これでも色々な人から便利だと言われてきました」
便利と言われて何も思わないのならいいが、それは見方によっては侮辱にも取れる言い方だ。しかし、夢快は思ったことを口には出さず、心にしまい込んだ。
「俺の名前は夢快だ。以後お見知りおきを。で、早速さっきの質問の続きを話させてもらう」
続き? と首を傾げる雨音を見て、夢快は苦笑し続きを話始める。
「雨音は前世の記憶を探してるんだろ。何故、こんな途方もないことをするのか。その理由をまだ聞いてなかったと思ってな」
夢快は気づかない内に少しずつ雨音に興味が涌いていた。
これが自身にとってかなりの変化だと気付くのは、もう少し後のことになる。
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