平凡を持て余す青年

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 梅雨が遅れてまだやって来ていない6月の日差しは暖かくて微睡みが否応なしに誘ってくる。  だが、その誘いにのるつもりは毛頭ない彼は窓の外に目をやる。別に外の景色を見たかった訳ではなく、ただ……ただ単に―― 「退屈だ」  そう。退屈だったから。退屈過ぎて外を見て、退屈過ぎてつい漏れ出した独り言だった。  彼は毎日が退屈で仕方なかった。  いや。正確に言うならば“この時間”が退屈なのかと、彼こと天ノ宮結季(あまのみやゆき)は真ん中の窓際の席で講師の話を右から左、左から右へと聞き流しながら頬杖をついて外を眺めていた。  いま受けている科目はすでに卒業までの単位をとっていて、別に授業に出る必要など無いのにもかかわらず、何故か受けている。と、言うか……結季は大学二年になって2ヶ月とちょっとだが、すでに卒業に必要な単位を全てとっていた。  つまり、結季は授業はおろか大学にも行かなくて良かったりする。  なのに、結季は家から徒歩で2時間もかけて大学に来ている。  それには理由があるのだが、いずれ分かることなので割愛させてもらえれば有り難い。  とにもかくにも、結季は退屈で仕方なかった。  そんな結季は毎日のように呟く―― 「刺激がほしいな」  空を眺めて……。
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