第二章 説得

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   それは、松本も確認してみたが酒口に見落としは無かった。 「あの人は几帳面で、どんな事でも文書に残すんだ。それは、捜査の時も私生活でもだ」 「酒出さん、それって」  これまで二度、酒口は酒出と組んで捜査したが、必ず専用のノートを作らせて、何かにつけて酒口に記入をさせていた。  その始まりが、高桑だったのか。  酒出は、「そうだ」と目で答える。  では何故、高桑の手帳が無いのだろうか。 「今回の事件前に、本人が処分したんじゃないでしょうか」 「菊乃ちゃん、それは何故だ」 「証拠隠滅の為、でしょうか」 「だったら、アパートから出た切り抜きやなんかも、一緒に処分するだろ」 「そうですよね……」  落ち込む松本を余所に、酒出は例のルーティーンを行い、考えに耽っている。  柿崎と酒口は、それを見守るだけで口を挟まない。 「やはり、このヤマは終わってねぇ」 「では、警部補」 「あぁ、いつも通りでいいなら捜査してやろう」  どこまでも、偉そうな酒出であった。      
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