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それは、松本も確認してみたが酒口に見落としは無かった。
「あの人は几帳面で、どんな事でも文書に残すんだ。それは、捜査の時も私生活でもだ」
「酒出さん、それって」
これまで二度、酒口は酒出と組んで捜査したが、必ず専用のノートを作らせて、何かにつけて酒口に記入をさせていた。
その始まりが、高桑だったのか。
酒出は、「そうだ」と目で答える。
では何故、高桑の手帳が無いのだろうか。
「今回の事件前に、本人が処分したんじゃないでしょうか」
「菊乃ちゃん、それは何故だ」
「証拠隠滅の為、でしょうか」
「だったら、アパートから出た切り抜きやなんかも、一緒に処分するだろ」
「そうですよね……」
落ち込む松本を余所に、酒出は例のルーティーンを行い、考えに耽っている。
柿崎と酒口は、それを見守るだけで口を挟まない。
「やはり、このヤマは終わってねぇ」
「では、警部補」
「あぁ、いつも通りでいいなら捜査してやろう」
どこまでも、偉そうな酒出であった。
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