第三章 七年前の事件

4/58
前へ
/480ページ
次へ
   そして、昼まで一時間となった時、ようやく酒出は刑事課に登場した。 「よぉ、千葉北署刑事課の諸君お揃いで」 「酒出。お前、いい加減にしとけよ」 「北さん、何をそんなに怒ってんだよ」 「怒るに決まってるだろ。大体、今何時だと思ってやがる。んっ、お前、酒臭く無いな」 「あぁ、今回は相手が俺のお師匠さんかもしれんのだ。酔ってる場合じゃねぇんだよ」  そう、酒出から酒の臭いが一切しなかった。  今までの彼であれば、酒の臭いをプンプンさせて、周囲の人間を不快にさせるのだが、今日に至ってそれが無い。  彼の言葉通りなら、アルファホテルの被害者である、高桑 陣八が被疑者であるならば、師弟対決と言ってよいだろう。  だが、酒出も微妙な言い回しであった。  かもしれない。  それは、彼の中で高桑が被疑者では無く、容疑者だと思っているのだろう。  いや、思いたいのかもしれない。 「じゃあ、何でこんな時間に来たんだよ」 「あぁ、ある物を探しててな」 「ある物?」 「あぁ、そこに置いてある」
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

867人が本棚に入れています
本棚に追加