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酒出が指差した先には、台車に乗った段ボール箱が二つ乗って、刑事課の入り口に置いてある。
それを酒口に運ばせる。
「酒出、これは?」
「俺が、高さんと組んだ事件の資料だ」
「捜査資料を、茂原署まで取りに行ったのか?」
「いや、家から持ってきた」
酒出と北方の会話の間に、酒口が段ボール箱を開いていた。
中からは大量のノートが出てくる。それも、年季が入り茶色がかったものが多数。
「酒出さん、これって……」
「言ったろ、高さんは俺のお師匠さんだと」
事件の詳細を書き込んでいくのは、酒出のオリジナルでは無く、高桑から引き継いだ手法のようだ。
試しに酒口は、その中の一冊を手に取った。
そして刑事課の面々も、各々がノートを手に取り開いてみる。
「うわっ、汚ねぇ字」
「こんなんじゃ、何が書いてあるか読めませんよ」
刑事課の面々から、非難の声が上がる。
ただ一人、松本だけは沈黙を決め込んでいた。
だが、酒出はそれを気にも止めず、思い出話しでもするように切り返す。
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