第三章 七年前の事件

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   一同の頭に、その疑問が沸き上がったのだが、流石に署長相手にそれは言えなかった。  高見沢にしてみれば、自分はお目付け役のつもりで会議に参加する。  事件は、一応の終わりを見せている。  被疑者、高桑 陣八の死亡で送検。  いくら、県警の柿崎警視の後ろ楯があるとはいえ、決着のついた事件を蒸し返せばどうなるか。  警視庁とて、黙っていないだろう。  だから、特に酒出警部補が度を越した捜査をしないか、現時点から見張ろうというのだ。 「じゃあ、始めるか。署長、いいですね?」 「あぁ、北さん。よろしく」  北方は、一応署長を立てて会議の進行を始める。  高見沢にしてみれば、北方こそが刑事課のモラルであり、精神的支柱だと思っているので、彼に釘を刺そうと言うのである。  だが北方もまた、高見沢を煙たく思っていた。 「酒出、どこから始める?」 「そんなものは、頭からに決まってるだろ。北さんよ」 「じゃあ、誰か柴国事件の概要を頼む」  柴国事件については、八次刑事が概要を発表した。
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