第三章 七年前の事件

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   柴国事件に関しては、事件発生から昨日まで県警が全力をあげ、捜査していた為に情報の全てが揃っているようだ。  柴国の社員の供述。  被害者の遺留品。  ローカルテレビの映像。  社内防犯カメラの映像。  目撃者の供述。  押収された証拠品。  県警本部は、それらを検証して犯人像に迫ろうとしていた矢先に、第二の事件が発生してしまったのだ。  検証すると、高桑に通ずる部分も幾つかあった。  だからこそ、県警も警視庁からの話しを受けて、捜査本部の縮小を決定付けたのである。 「じゃあ、次。アルファホテル事件の概要を、誰か」  今度は、別の刑事が発表をする。  こちらは、昨日発生したばかりの事件。  一件目とは違い、推測や仮定を多く含みながら、記者会見で語られた事実に毛が生えた程度の情報だった。  それは、仕方ない。  一週間かけて調べた第一の事件の情報と、初動捜査の段階の情報では、緻密さに差が出るのは致し方無いだろう。  だが第二の事件にこそ、真実の色が濃く出ていそうなのだ。
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