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「な、なんですか……」
「白雪、どうしてそんなにツンデレなんだい?」
「……意味が、わからない。貴方と話していると頭が痛い」
話がかみ合わないことがこの上なく歯痒い。
どうして自分はこんな人間と小さい頃から付き合いを持って生きてこれたのかさえ不思議で仕方がないくらいだ。
「じゃあ、横になるかい? もちろん僕のベッドで、だけど」
「……もう嫌だ、ふざけるな、本当になんだっていうんだ」
泣きたい気分になる。悔しくて顔を反らせば、笑うように吐息を溢す音が耳に入り、腰から手が外された。
「白雪王子」
声と共にすっと前に跪かれ、白い手を片方恭しく取られた。
この先に何があるかなんて、わかりきったことで、拒否すればいいのに体は動かずなすがままだ。
それは仕方がない。だって、年下の自分に跪き、姫にするような紳士的な愛情表現をする王子は、とても絵になる。たとえ白雪が姫でなくとも。
「今宵のダンスのお相手を願えますか?」
形の良い唇が手の甲に押し当てられる。
言葉とは裏腹に、見上げてくる目は獰猛さを含んで、紳士的とは言い難い。
白雪にそれに応える以外の選択肢は与えられない。
今、こうして彼の国に無償で匿って貰っている身として、反抗などできるはずもないのだ。
それでも、この王子に全てを捧げられるはずもない。
だってそうだ、こんな王子に、全てを許せるものか。
「私は貴方に全てを許しているわけではない。貴方にとって、私はただのダンス相手でしかないのだから」
何度、何夜、彼とダンスを共にしようとも、それはただの相手でしかないのだ。
そんなもののために、全てをくれてやることなどできはしない。
「どうしてそんなことを言うんだい? 僕には白雪だけだよ」
立ちあがった王子に頬を撫でられる。
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