序章

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 無知は罪であるという。  私は、それを否定することはできない。  日本は、平和な国であるという。  私は、それを肯定することはできない。  知らないだけなのだ。  若しくは、比較して安心しきっているだけなのかもしれない。  恐ろしい戦地の映像は、いつだって画面のあちら側でしかないのだから。  だが、現代の日本だって、どれほど血が流れ、命が失われているかも考えるべきだ。  年間どれほどの人が行方不明となり、月にいくつ事件が起こり、日々何人が死んでいるのか。  気付くべきだ。  人の生死にかかわる事件のニュースを、見ない日など稀であるという事実に。  連続殺人犯の凶行が報道されていたとしても、どうせ「危ない人がいたものだ」程度しか思わないのだろう。  何人も殺されているうちの一人に、自分が成り得たかもしれないというのに。  天災の被害ならば、いつだれが巻き込まれるか分からないという実感も持ちやすい。  その感覚は、概ね理解出来る。  だが、事件も事故も、引き起こすのはいつだって自然だけではない。
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