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男が家に入ると、奥から声が聞こえて来た。
「一体どうしたのですか?そんなにうるさくしてはせっかく寝かしつけたアレスが起きてしまいますよ。」
やれやれといった顔で出て来たのは、小柄で優しそうな印象の女性であった。その女性、レイアは帰って来た夫が持っているものを見て、夫と同じ様に驚いた。
「アノス、その子はどうしたの?」
「俺が帰って来た時に小屋の外で見つけたんだ。そのまま放置なんてできないから家の中に連れて来たが...」
レイアに聞かれ、事情を説明する男、アノス。
説明を聞いたレイアはしょうがないといった顔で、アノスからかごを受け取り、子供を抱き上げる。
「この子に罪はないものね。私たちで育てましょう...あら?」
レイアはかごの中に手紙を見つけた。子供をアノスに渡し、その手紙を広げて読みあげた。
「その子の名前はソラ。訳あって私たちは育てることができません。どうかその子を育ててください。お願いします。」
手紙を机の上に置き、その子の方を向く。
「ソラ、かぁ。家族が増えて、また賑やかになるわね。」
ソラを見て、微笑みながら呟く。そして、手紙を片付けようとしたレイアは裏面に書かれていた文字を読んで驚愕する。
「あ、アノス!大変よ!この子...」
「どうした?こ、これは...」
手紙を受け取ったアノスも驚愕する。
レイアは驚きのあまりその場に座り込み、哀れみのこもった目でソラを見つめる。
「こんな子がいるなんて...あなたは、大変な運命の下に生まれて来たみたいね。」
そんなレイアの呟きが夜風に溶けていった。
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