~ 傷痕 ~

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ベッドルームに入ると ナツは背中をこちら側に向け 微かな寝息が聞こえてくる 彼女を起こさぬよう ゆっくりとベッドに滑り込み もう一度ナツに目をやった こうやって見ると その小ささが改めてよく分かる …ふと違和感を感じた 頭の横に置かれた腕 長袖の端から僅かに見える 左の手首に無数の線が刻まれていた そこにそっと触れる 指先に当たる 小さな凹凸の感触 新しいもの 古いもの 小さな凹凸をいくつも感じ 明らかに自らの手でつけた傷だった 『君も俺と同じなんだね…。』 そう呟きながら 自分の左手首に手を置いて そこに同じ感触を感じていた ただ この小さな体に 他人では計り知れないものを背負っているのだと思うと 歯痒さが胸を締めつける 寝息を立てる 彼女の頭を優しく一度撫でながら 心の中で思った "今夜は安心して大丈夫だよ" 『おやすみ……ナツ。』 そして ベッド脇にある 小さな照明の明かりを ゆっくりと落とした
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