~ 出逢い ~

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重たい体を引きずりながら 女の正面に立つ 近くで見ると 随分 小柄であるのが分かり 胸元まで伸ばした黒い髪は少しごわついて あまり清潔にしてるようには見えなかった 正面に人が立っているというのに 女は顔をあげようとはしない 俺は構わず声を掛けた 『待ち合わせ?』 声が裏返る 考えてみれば これまでナンパなんて 一度もしたことがなかったからだ 女は何も言わず ただ首を横に振った 『この後 何か予定あるの?』 首を横に振る …沈黙 次が続かない…… 思考をフル回転させても出てこなかった すると 緊張と混乱のせいだろうか 突如視界が回り 立っていられなくなった 『隣…座っていい?』 女は初めて頷いた 途端に糸の切れた人形のよう 女の隣に倒れ込んだ それでも女は俯いたまま こちらを見ようとはしない 急に胸に痛みを覚える 直接的な痛みではなく 孤独感に苛まれた 締め付けられるような痛み 『誰も俺を見ちゃいないよな…。』 無意識のうちに 声に出していた すると 女は俯きながら呟いた 『私も…同じだよ……。』 透き通った声 聞き心地がいいのと同時に 胸に突き刺さる 自然と涙が溢れていた 『泣いてるの?』 『……うん。』 『寂しいから?』 『……多分。』 『……私、行くとこないんだ』 『………ウチ…来る?』 『……………うん。』 女の方に視線を向ける その時 初めて女と目が合った その顔は女というには まだ幼く 少女のあどけなさが残っている すると少女は立ち上がり 寝そべる俺に そっと手を差し出した 『行こう。』 差し出された手を握り返し立ち上がる その手はとても小さく とても温かかった……
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