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驚きの表情で彼女を凝視する俺に
ナツが怯えているのに気付く
そこで我に返り
平静を装って席へと着かせ
自分は彼女の向かいに座った
『大したものじゃないけど、どうぞ。』
そう言うと
最初は警戒しながらも
スプーンとフォークを器用に使い
一口目をゆっくりと口に運んでいく
余程空腹だったのだろう
二口目からは食べるペースが上がり
あっという間にパスタの盛られた皿は
空っぽになっていた
『まだおかわりあるよ?』
『……もう大丈夫…。』
少し恥ずかしそうに遠慮した
空腹だったとはいえ
こんなに見つめられながら食事をするのは
やはり恥ずかしかったのだろう
二人分のグラスにアイスティーを注ぎ手渡す
『少しは落ち着いてたかな?』
彼女は渡されたグラスを
胸の前に両手で持ちながら
『ありがとう…。』と
小さく礼を言った
しばらくの間 沈黙が続く
女が苦手とかではない
むしろどちらかと言えば
不自由した事はなかった
だが目の前に座る少女と
どんな会話をしたらいいのかが分からなかった
とりあえず互いの緊張を解くため
ありきたりな質問から入ることにした
『あそこにはいつもいるの?』
『ううん……たまに。』
『そうなんだ。こんな時間じゃ終電乗り遅れたか何か?』
『ううん……1ヶ月くらい帰ってない。』
1ヶ月……こんな少女が家を出て
一月もの間どうやって暮らしてきたのか
様々な想像が頭を駆け巡る
『結構若いよね?歳聞いてもいいかな?』
『…………15…中3』
ナツは中学生だった……
それから
ほぼ一方的な質問ばかり続いたが
彼女の状況が少しだけ分かった
1ヶ月前 家出をし
夜はネットカフェに寝泊まりしていたが
所持金が尽きてしまい
行く宛もないまま
さ迷い歩き
あの場所に着いて
座りこんでいたところに
俺が声を掛けたそうだ
ただ家出の理由や
家族の事に関して
彼女は答えようとはしなかったので
そこはこれ以上
突っ込まない事にした
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