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柵から身を乗り出し、次第に薄くなっていく優の影を見て、男はふぅっと息を吐きだした。
「まだまだ……。あと、50人はいる……」
無事に〈あちら〉に転送されたことを確認し、背を柵にもたれかけさせる。不必要に眩しい太陽に顔を歪ませながら、懐から煙草を一本取り出して吸った。
「……そろそろかな……あぁあ」
十秒と吸っていない煙草を名残惜しげに眺め、男はそれを踏み消した。
ファイルによると……あぁ……くそぅ。リストカット狂の青年じゃないか……。血を見そうだ。
男はけだるそうに手を三回打ち鳴らした。
「はいはーい、どちらまで?」
「ポイントB。後は勝手に探します」
「了解ナリ」
だからノリがうざいって……。
突如として足元に魔法陣が現れ、体全体を光が包み込んだ。
またこんなおふざけを……。魔法陣なんて、よっぽど高位の呪詛の時にしか使わないだろうに。
眉をひそめながら転送されるのを待つ。
そもそもこのプロジェクト自体あの人の思い付きだ。
ただでさえこの頃は死者が長蛇の列を成して、裁きを待ってるってのに……。
はぁ……疲れる。
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