Ⅴ.剣戟

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「くそっ、敵が増えやがった!」 イギリス、クロイドン。 結衣が深刻なダメージを受け、戦闘不能状態にあることを、彼らイギリスの神族はまだ知らない。 しかしそれは、セトラスの配慮とも言えた。時同じくして戦闘中の身、いたずらに動揺させても無意味だからだ。 「ったく、もうすぐ二つ目も倒せそうだったのに……、少しは空気読むっすよ!」 戦場には今、白を基調とし、赤色の装飾が施された大剣を携える“聖炎(せいえん)”ベルフォート、黄土の三節棍を携える“刹光(せっこう)”ファルーク、その二人しかいなかった。 もっとも、戦力が彼らのみになったわけではない。世界の神族、なかんずくヨーロッパにおける総指揮官を担っている“天嶺”アステヌの戦術の一つだった。戦場に出向く者を二人ずつ入れ替わりにすることによって、より効率的に敵にダメージを与え、かつ高い戦闘力を維持できる。 実際、妙策は奏功し、派遣された魔獣の一体目を難なく倒し、まもなく二体目も倒せそうなところだった。 しかし、ここにきてさらに一体増えた。零たちの策略だ。大臥たちに合流させまいとして、魔獣の追加を実施したのだった。
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