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「……なんとかならないものか」
彼は考えたが、携帯は激しい闘いにより紛失してしまった上に、何よりも足が動かないことが致命的だった。八方塞がりとは、今まさにこの状況を指し示すのだろう、と閃くも、それは解決には繋がるはずもなく、仲間の救助を信じて待つ他、手段はなかった。
さらに、僅かな空間に上半身が収まっていることによる慢性的な酸欠で、呼吸すら満足にできない。何もしなくても指先が微かに震え、次第に彼の思考の余地も奪われてきていた。
「……今は朝だろうか。それとも夜なのだろうか」
瓦礫のわずかな隙間さえもなく、日光は完全に隔絶されている。もはや時間感覚は、痛覚よりも先に消え失せてしまっていた。
「……」
それでも彼が未だに我を保てるのは、己の愛娘と愛息、そして同胞たちの安否が気になるからでもあった。
外界の情報は全く入ってこない。ひょっとすると、神族、ひいては世界は奴らの手中に落ち、滅亡したのかもしれない。
「……」
それらを知る術は、自己解決できるものではなかった。
ただただ、あの奇襲から逃れることができた神族を信じて、待つしかない。
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