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「……」
カシャリ、と金属の冷たい音が響き渡る。
「(ここは……)」
少し、体が痛んだ。
しかしそれよりも、意識を取り戻した彼女は、自分の両手が動かせないことに気付き、
「っ!!」
否、両手だけに留まらない。
腹、足首にも、金属製の枷が取り付けられていて、身動きが取れない。
碧色の眼を動かして、自分の置かれている状況を探る。そして、気付いた。
「……!」
自分が架けられているのは、十字架だった。
処刑台として古くから使われてきた、あの十字架だ。
当然ながら身の危険を感じ、唯一動かすことの叶う頭を持ち上げ、周りを見渡す。しかし、薄暗くて、よく見えない。
背後、十字架の上方を見上げると、
「……時計?」
巨大な、時計盤らしきものが、うっすらと見えた。その針の位置までは分からない。
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