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どれくらい時間がたっただろうか…?
まだ二時間。いや、もう二時間もたったのか
これまでで1勝98敗。これがあいつの対戦成績。
この1敗は、情けでもなんでもない。たまたま、負けた。ごく普通、自然に負けた結果だ。
今は情けをかけてはいるのだが…
…また勝った。
これで1勝99敗。記録更新だ。
「ねぇ…」
「ん?どした、諦める気になったか」
「それもあるけど…。これで100戦目だよね」
「…う、うん、よく数えてたな」
「だって、約束あったもん」
約束?全く検討がつかない、頭の片隅にも置かれてない。
「な、なんだったっけ?あまりよく覚えてない」
「そうだろうと思った」
そう言うと、カバンの中をごそごそとし始めた。
多分…成り行きで言ったものだろう。俺は大抵のことは忘れないし、言ったことばには責任を持っている。
「はい、これ…」
「これは…?」
見たことないパッケージで、題名がかかれてないゲームソフトだった
「なんだよこれは?」
「あんたのお父さんの形見みたいなもの。ね、一緒にやろう?」
あぁ、思い出した。「暇潰しに100回戦ってくれたら、なんでも言うこと聞いてやるよ」と。
このゲームは俺の父親の会社のゲームらしくて、一度こいつに誘われたが、なにもやる気なんて起きなかった。
未練があったのかな。両親が死んでからなにも感じなかったのに
これだけはやっちゃいけないって勝手な想像を抱いていた
俺はそのゲームを抱きしめて、胸の衝動を必死に抑えようとしていた。
流れ出る涙とともに…
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