過去×理由

6/6

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
どれくらい時間がたっただろうか…? まだ二時間。いや、もう二時間もたったのか これまでで1勝98敗。これがあいつの対戦成績。 この1敗は、情けでもなんでもない。たまたま、負けた。ごく普通、自然に負けた結果だ。 今は情けをかけてはいるのだが… …また勝った。 これで1勝99敗。記録更新だ。 「ねぇ…」 「ん?どした、諦める気になったか」 「それもあるけど…。これで100戦目だよね」 「…う、うん、よく数えてたな」 「だって、約束あったもん」 約束?全く検討がつかない、頭の片隅にも置かれてない。 「な、なんだったっけ?あまりよく覚えてない」 「そうだろうと思った」 そう言うと、カバンの中をごそごそとし始めた。 多分…成り行きで言ったものだろう。俺は大抵のことは忘れないし、言ったことばには責任を持っている。 「はい、これ…」 「これは…?」 見たことないパッケージで、題名がかかれてないゲームソフトだった 「なんだよこれは?」 「あんたのお父さんの形見みたいなもの。ね、一緒にやろう?」 あぁ、思い出した。「暇潰しに100回戦ってくれたら、なんでも言うこと聞いてやるよ」と。 このゲームは俺の父親の会社のゲームらしくて、一度こいつに誘われたが、なにもやる気なんて起きなかった。 未練があったのかな。両親が死んでからなにも感じなかったのに これだけはやっちゃいけないって勝手な想像を抱いていた 俺はそのゲームを抱きしめて、胸の衝動を必死に抑えようとしていた。 流れ出る涙とともに…
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加