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世界には8つの巨大な国家があり、8つの魔術属性が存在する。
つまり、ひとつの国に対しひとつの属性が備わっており、人は、出生国の属性を先天的にその身に宿して産まれてくるのだ。
8つの属性とは即ち、火、水、風、地、氷、雷、そして光と闇。
水と火、風と地、雷と氷、光と闇はそれぞれ相反属性と言われており、先天的に備わった属性の相反属性を有する術を使うことは、不可能なのである。
先天属性の逆でなくとも、相反属性同士を極め得ることは、不可能だ。
「しかしまだ、彼女の先天属性が光と闇以外だという可能性もあるしな……」
気を落ち着けるようにして、デュークが言う。
ヴィクトルは神妙な面持ちでこくりと頷いた。
「ああ。 だがそれを抜きにしても、国に連れ帰る必要はある。
光の柱の出現と共に突然異変が収まったことと、ミヤが無関係であるとは思えないからな……」
つい数時間前までは限りなく低かった、美夜と異変との関係性。
現在その確率はヴィクトルの中で、かなりの高さになりつつあった。
キザイアの者達が美夜に危害を加えなかったこともその理由として挙げられるが、主な原因はやはり、魔術を知らぬと言っていた筈の美夜が使役した高等魔術にある。
水、風、雷、そして光と闇。
先程見ただけで少なくとも5つの属性を、美夜は使役したということになる。
それだけでは別段おかしな話ではなく、デュークの言う通り、美夜の先天属性が光と闇以外であるという可能性は、ある訳なのだが。
……しかし、美夜が魔術を使役した時に感じた、周囲に満ちた魔力全体がざわめくような、あの感覚は……
ヴィクトルがそこまで思案した、その時。
気持ち良さそうに寝息を立てていた美夜が、突然がばりと起き上がった。
あまりに突然だったので、ヴィクトルとデュークは不覚にも驚いてしまう。
美夜はしばし呆然と何もない自分の正面を見つめ、やがて、ゆっくりと周囲に視線を巡らせた。
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