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ヴィクトルがデュークへ目配せすると、デュークは神妙な面持ちで僅かにこくりと頷いた。
美夜の混乱を避ける為には、無理に思い出させる必要は無い。
「まぁ、その辺りのことは良い。ともかく今は、アルテミシアの王城へ向かっているところだ」
「王城!? それってもしかして、王様とかが住んでいるという、あの伝説の……?」
「そうだが……?」
伝説かどうかはさておき。何やら当たり前のことを聞いてきた美夜を不振がりつつ、ヴィクトルは丁寧にも答えてやる。
すると、美夜は心底嬉しそうに表情を輝かせた。
「凄い! わたし、城なんて写真以外で見るの初めてだよ!楽しみ~……あっ!
やっぱり屋根の上にしゃちほことか乗ってるのかな!?」
「しゃちほこ……? 何だそれは」
「あ、そっか、知らないか。 もしかして西洋風の城なのかな?
ヴィクの服装から察するに、そんな雰囲気だよね」
美夜の言っていることはあまり理解出来ないが、とにかく、城を見るのが楽しみらしいということは判る。
そのはしゃぎ様を見て、ヴィクトルは苦笑にも似た表情を浮かべ、デュークは思わず笑いを漏らした。
くすくすという笑い声に反応し、美夜はデュークの方へと視線を向ける。
今まで混乱と興奮に満ちていた為にすっかりその存在を忘れていたが、そういえば、この爽やかなお兄さんは一体……
「えぇと、何だかお恥ずかしいところを……
わたし、柏木美夜と申します」
とりあえず自己紹介をしてみる。
すると美夜曰く爽やかなお兄さんは、予想を裏切らぬ爽やかな笑みをその顔に浮かべ、口を開いた。
「俺はデューク=ジェネヴィーブ。
ヴィクと同じアルテミシア王国の、魔術騎士団に所属しています」
「魔術騎士団……?」
鸚鵡返しに、美夜は尋ねる。
その疑問にはヴィクトルが答えてくれた。
「アルテミシアが持つ軍事力の、主力部隊のひとつだ。
魔術師団、魔術騎士団、騎士団と3つの部隊があって、デュークはその魔術騎士団の団長を務めている」
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