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公園の中をしばらく歩くと、ぼんやりとした光が見えてくる。
街灯の光などではなく、まるで空間自体が発光しているかのような不思議な光だ。
光の色は紫色で少々不気味な感じがしたが、美夜は臆することなく光の元へと足を進めた。
「何、これ……」
光の源。
公園の広場に広がっていた光景を見て、美夜は目を見開いた。
大きな大きな、発光する線で描かれた円。
その中に繊細に散りばめられた、幾何学的な紋様。
魔方陣。
そんな言葉が、美夜の脳裏を過ぎる。
そう、巨大な魔方陣。
紫色に発光し、妖しくも美しい雰囲気を醸し出すそれは、陳腐ではあるがそうとしか表現の仕様が無かった。
「……宇宙人襲来……?」
場にそぐわぬ言葉を呟きながらも、美夜はまるでそれが義務であるかのように、ふらふらと魔方陣へ近付いていく。
普段の彼女であれば、このような妖しげなものには近寄らない。
実際、彼女の中の冷静な部分は激しく警笛を鳴らしていた。
しかし、確かに聞こえたのだ。
魔方陣の先から、自分を呼ぶ声が。
ざわざわと雑音のように聞こえてくる無数の声。
大半は好意的ではなく、貪欲さと醜悪さを感じさせる不快なものでしか無かったが。
その中に、たったひとつだけ。
助けを求めるかのような、微かな声が聞こえたのだ。
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