商人と奴隷

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「おい!お前! こっちにこい」 ハマ…いや、ハマ様が 自分を呼んでいる。 奴隷としての習慣 呼ばれたらすぐに走って駆け寄り 足元にひざまづく。 そこからは、靴をなめろといわれたり そのまま思いっきり蹴られたり 、踏まれたり… 僕の行動は、その時の主の趣味にゆだねられる。 果たして、この人は… 一体どんな仕打ちをしてくるのか… 「顔を上げろ」 「はい」 即座に、手を床につけたまま 顔のみをあげる。 「違う、そうじゃない。立て」 「…え…?」 立て、と主に言われても どうすれば良いか分からず、困惑してしまい、すぐに立つことが出来なかった。 というのもこれまで、主を前にして 堂々と立ったことなど一度も無かった。 もし、自ら立とうものなら 奴隷のクセに生意気だと、死ぬ程殴られるに決まっていた。 「いいから。」 「は…はい。」 困惑している自分を ハマ様が急かす。 ビクビクしながらも、少し背を曲げて 決して目を合わせないようにして立った。
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